昨日、西加奈子はんの『こうふく みどりの』を読んでおりましたら、なんかこう
幸せな匂いが体中に蔓延してしまいまして、そんなのんびりした気持ちでいると
世の中が少し平和色になってもうて、事実なんですけど、本の影響か少し言葉遣い
がおかしうなってしまいましたが、いやこれはやっぱり事実なんです。
ただ歩道を散歩しとったんです。日差しの強い暑い午後でした。
そしたら、前から自転車がやってきまして僕は左側に避けんたんです。日本は左側
通行ですからそりゃ常識ってもんです。
あと5メートルで自転車とすれ違うくらいの距離でした。突然、自転車を運転してた
女性の麦藁帽子みたいな帽子がフワっと風に流されるように路面に滑り落ちたんです。
あっと思いました。思うたけどこんな世の中やから余計なことはせんとおこうとも思
うたんです。そしたらな、その運転してた女性がフラフラしながら自転車を止めよう
として、そのふらつき具合を見てたら、その自転車には女性の前と後ろに小さな子供
が一緒に乗っていたことが判明したんです。
ほんの一瞬でした。自転車を止めても、子供が2人も乗っている自転車を放って
帽子を拾うことなんてあの女性には無理や、僕は思うたんです。
そしたら脱兎のごとく僕はその帽子に向かって走りながら
「ちょっとそのままで待って、僕、拾いますから」、その女性に言うてたんです。
今思うと、あれは無我夢中というやつだったかもしれません。
帽子を受け取った女性は本当にやさしい顔をして僕にお礼を言っておりました。
僕が憶えているのはそのやわらかな表情と麦藁帽子だと思っていた帽子が布地製の
ストローハットだったという事実だけでした。
あの女性が阿呆ならばあの出来事を運命だと勘違いしたかもしれない、今はそう思
えます。それとも子供ができてからは旦那に
「もうお前のこと女としてなんて見れないよ。もう母なんだよ、母。」と言われて
体が欲求不満で悶々としていて、僕に救ってほしがっていたかもしれません、今は
そう思えます。
ただあのときの僕は一生懸命で、他に何も考える余裕なんてなかったんです。
どんなときでも心に余裕をもてない僕はまだまだです。
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